旗揚げから今まで



 12年前、子持ちの女性たちが劇団を旗揚げしました。
 皆、絵や音楽に関わっていたり、芝居や歌が無類に好きだったりしたのですが、当時は子供も大人も楽しめて家族で行ける安い舞台が少なかったのです。
 そこで自分達でめざすことにしました。演目を決め台本を作り作曲し、いろいろな楽器の生演奏のある音楽劇を劇場や小学校で低料金で公演してきました。「ヘンゼルとグレーテル」から始まってさまざまな作品に自分達の子育てや生活の実感を織りこんできました。


♪何かちがってみえる 今までと
光の扉を開けてゆっくり歩き出せ♪


 これはヘンゼルとグレーテルが森の中で歌う歌です。魔女との試練を乗り越え、探しにきた両親と再会した2人。父さん母さんや子供たちの心の中で、少しずつ何かが変わっていました。
 私たちの家庭や仕事での経験は舞台を作っていく過程とつながっていました。相手役に耳を傾け、本気で向かい合うと何かが生まれるのは、子育ても芝居も共通です。演出の長谷透さんから学んだアンサンブルの大切さとも、それはつながっていることでした。子連れ稽古では、芝居や歌がのってくると子供達が遊びを止めて寄ってきました。彼らは最初の観客で批評家でした。
 ある時期から、劇場での大掛かりな照明や装置から離れ、シンプルな小品を自分達で構成、演出し、出前公演するようになりました。今は、田島征彦さんの絵本『じごくのそうべえ』(童心社)を制作中です。

 ぺぺんぺんぺんと三味線で始まる綱渡り。そこから落ちた軽業師のそうべえが地獄で仲間と大暴れ。えんま大王も目玉白黒の痛快劇です。
 上方落語が基なので言葉は大阪弁。越える山は沢山ありそうですが、心意気で楽しい劇にしあげようと皆で知恵を絞っています。音楽では、太鼓や拍子木、三味線などの日本古来の音やリズムと、ピアノやチェロの音、現代の感覚とを組み合わせ面白くつくってみたいと思います。

劇団 湘南山猫 栃内まゆみ



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